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あたしの理想は物腰が柔らかく、落ち着いた年上の男性。そして程好い声の低さで、きりっとした切れ長の瞳を兼ね備えていれば言う事なし。 このことを同級生の白石と忍足に言ったら「理想が高すぎる」とキッパリ返された。しかも忍足は年上じゃないけれど同い年の従兄弟を紹介してやるとか言い出した。ぶっちゃけそんなのどうでもいい。 でもあたしがこだわるのは年上!同い年と年下には興味ないの! ――そんなことをほざいていた次期もあった。このとき、まさかあたしが年下と付き合うなんて、これっぽっちも思ってもいなかった。 なんとあたしの(人生初の)彼氏はテニス部2年の財前光くんなのだ。同じ委員会だということ、あたしが白石と忍足と同じクラスだということから会話が弾み、色々とやり取りをしていたらこのような結果になってしまった。 別に悔やんでいる訳じゃない。付き合って3週間程経つけど「こんな付き合いもいいもんだわ」と吹っ切れている。 それでも彼が見せるしぐさや、ころころと変わる表情が大好きだ。 実際のところあたしは軽い性格だから、光くんがいる前でも至って普通に白石と忍足と会話している。しかし年下の彼はそれが気に入らないらしく、誰が見てもわかるような嫉妬をするのである。しかも相手は決まって白石と忍足だ。光くんのそこがまた可愛いのだけれど。 今日も放課後の3年2組の教室に、彼は来ていた。 「4限目の前、俺さん見たんやけど」 「そうだったの。声かけてくれればよかったのに」 光くんはどうやら今日の移動教室中に、あたしが白石と忍足と話しているところを目撃してしまったようだ。本人は唇をきつくかみ締めながら耐えていたみたいだけど、今あたしと会った瞬間に溜め息をつかれた。 少々気に食わないなと思いつつも、話は聞いてやろうと耳を傾ける。光くんはあたしを避けるように顔を背けていた。あたしは顔には出さないけれど、内心ショックを受けている。 「声かける余裕なんてないっスわ。――さん、また部長と忍足先輩と話してたんスか」 「いいじゃん同じクラスなんだし。光くんあんまり気にしちゃ駄目よー」 「…だったら部長か忍足先輩と付き合ったらいいっスわ。俺、教室戻りますんで」 「えっ――ちょっと待ってよ。だから光くん気にしすぎだってば!」 冷たい視線を浴びせ、たったそれだけを吐き捨てるように言う光くん。あたしに見せた後姿はなんだか寂しそうで「ああ構ってほしいんだな」と母性本能がくすぐられた。 光くんはすたすたと歩きて行ってしまう。――ツンツンしておいてあとで甘くなるのがいつものパターン。光くんの機嫌を戻すために、あたしはいつもこの手段を使う。 人があまりいない放課後だからできることなんだけど(ていうか人がいたら恥ずかしくて死んじゃいそうなんだけど!) 「光くーん!!」 「わっ!?なんなんスかアンタ!ここ廊下!」 「ごめんね。大好きだよ」 「……」 後ろから広い背中に(アタックではなく)抱きつくと、光くんは決まって耳を赤く染める。表情を見ることはできないけれど、きっと恥ずかしさを堪えているんだろうな、と思う。 白石や忍足より背は小さいけれど、顔が近い分いいのかもしれない。ぴたりと立ち止まった光くんはぴくりとも動かないし何も言わない。あたしはもういちど「光くん?」と名前を呼んでみると、また深い溜め息が出された。そんなに溜め息つかなくてもいいと思うんだけどな…。 「まあええっすわ…。それに、俺もすんませんでした」 「なんで謝るの」 「さんの言う通り、俺気にしすぎなんやと思う。でも、部長と忍足先輩にとられそうで嫌や」 「大丈夫よ。あのふたり、あたしに恋愛感情なんて持ってないと思うから」 「そうやったらええんですけどねー」 ――ホンマ俺、さんのこと一途に好きやから。 彼の口からその言葉が出たとたん、あたしはなんだかむしょうに光くんのことが愛しくなって、一層抱きしめる腕の強さを強くした。 光くんは痛いだのやめてくれだの騒いでたけど、あたしはにやにやしながら腕を放さなかった。 光くんも赤いけど、あたしも真っ赤なんだろうな。だって嬉しさで抱きしめている腕はじんじんと痛むし、こんなに身体が熱くなってるんだから! 純恋心 100% 090110 「四天宝寺に恋をした」様へ寄稿。参加させていただきありがとうございました! |