ドリーム小説


修正ペンの後を撫でる。








明日でこの空間ともお別れだから、たくさんの想いをこめて今の気持ちを紙に(どこにでもあるようなノートの切れ端に)思いつくまま書き出している。思った以上に、担任でもありあの妙に煌びやかな男子テニス部の顧問でもあるあの男のことばっかりで自分でも正直、引いた。別に気持ちを否定するわけじゃないけど普段自分こんなこと考えてるのかって自分の深層心理みたいなものが分かってなんか変な感じだ。







渡邊オサム、27歳、独身、彼女なし。(多分)






どこにでもいるような(いや、いたら困るかも。)ただの一教師のはずだった。それがいつからかそれだけじゃ済まされない気持ちを抱いていて。分かってる。この気持ちがもしあの人に届いたとしてそれが大問題なんだってことは。私は生徒で彼は先生だから。だけどでも、煙草を吸ってるときの横顔だとか発言がやっぱり高校生とは違ってるとこだとか私をときめかせるのには充分なわけで。








ため息は隠せない。思いっきりため息を吐いた後で紙をぐしゃぐしゃにした。(こんなこと書いたって意味がない)






「何や、まだ残っとるやつおんのかー?」
「!?・・・あ、あぁ。もう帰ります。」
「なっ、おい!ちょっと!」






前のドアから急にあの人が顔を覗かせたからびっくりしたあたしは慌てて机の横にかけてあった鞄を掴んで後ろのドアから飛び出した。足をフル動員させて廊下を走る。あたしってほんとに可愛くない。先生のことを意識してしまってからまともに先生と口を利けてない。先生がHRとかで何か提案をする度にそれとは逆の方逆の方へと行ってしまう。つまりはそう、天邪鬼ってやつ。









中庭に着いたところで歩調をゆるめて芝生が比較的フカフカなところに腰を下ろした。・・・それにしてもあんな手紙とも呼べない代物、書いたところでどうすることも出来ないのに何で書いたんだろう。思考をその紙切れのことに集中させてたからか自然と手がブレザーのポケットにのびる。あれ?え?ちょ、あの青春の甘酸っぱい1ページとも呼べそうなこっぱずかしい紙切れがあたしのブレザーのポケットのどこにもない。困る。非常に困る。名前を明確に記したわけじゃないけど、読む人が読めばあれが私の物だって簡単に分かってしまうから。







そう。そう。もういっかい元来た道を戻ればいい。注意深く床のすみっこまでしっかりチェックしながら教室まで戻れば。先生も受験生で明日卒業式なのにこんな時間まで残ってる生徒を見つけて注意しに来ただけだろうし。うちの学校は教室に施錠しないから全然、問題ない。あの教室にいた生徒であるあたしはもう帰ったし、先生はめんどくさいことが嫌いだから自分の仕事が終わったらさっさと職員室に戻って明日の打ち合わせでもするに違いない。つまり今、教室には誰もいないはず。








目をこれほどにまでないくらい開けて(気持ち的には虫眼鏡とか使いたいところだけど。)廊下をすみずみまでチェックしながら歩く。いや、ほんとにない。見つからない。結構な大きさがあるからあったら分かりやすいはずなのに。結局は教室の近くまで戻ってきてしまった。まぁ、一番怪しいグレーゾーンは自分の机のまわりだから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。教室のドアに手をかける。せっかく全力疾走したのにあの努力がぜんぶ台無しだなんてほんとあの紙切れを落とした自分を呪ってやりたい。あぁ、どうか、あたしのくだらない、いやくだらなくもないけど、結構真剣だけど独白のようなあの文章が誰にも読まれていませんように。・・・ガラガラガラ。静かな廊下にあたしがドアを開ける音が響いた。(心臓に悪い!)












「な・・に・・・何やってるんですか?」






ほんとに意味がわからない。誰もいないと思ってた教室の中には先生がいて、こともあろうにあたしの席に座っている。しかも、先生の手にはあたしが死ぬ気で探してた紙切れ。・・・・え?紙切れ?ちょっ、









「ぁぁあああ!それ!な、んで!」
「アホ。いきなりデカイ声出すな。」
「いや、先生意味わからへんし!・・・早く返してください!それ捨てるんやから!」
からの熱い気持ちは受けとったで。」
「はぁ!?」
は手紙の方が素直やなぁ。」
「・・・・先生はほんま最低ですね。」








視界がぶれる。一生懸命あの紙切れを探した道をまたもや逆戻り。10歳近く年の差があるのに恋してしまったあたしにも非はあるのかも知れない。でも、あれはないと思う。いくら書いたのがノートの切れ端とはいえあたしの気持ちは冗談じゃないのに、あの扱い。高校生に好かれたってアホらしいかも知れないけどでも








「ちょお待てって!」






さっきは追いかけてこなかったくせに。先生は全力疾走で来たらしく肩で息をしながらあたしの手首を掴んだ。







「放してください!」
「放・・せるわけ・・・ないやろ。」
「どうせ笑いにきたくせに!10近くも年下の女が先生に恋してたのがそんなに滑稽でしたか?」
「お前、そんなに捲くし立てんな。誰もそんなこと思てへんわ。」
「嘘!」
「嘘やないて。大体お前なぁ、俺の授業ノートとってるふりして全然聞いてへんし、挙句の果てにはサボリがちになるし、HRではことごとく俺に反対してくるし・・・」







バレないように上手くやっているつもりだったのに。ノートとってないのもサボるのも。特にノートはたまに黒板に目を向けながら全然、違うこと書いてたから絶対バレてないと思ってた。先生の教科はノート提出ないしテストの点だってそんなに悪いわけじゃない。それに他の教科で同じ事たまにやるけど1回もバレたことないし。それなのに。








「・・・ノートは絶対わからへんと思っとったのに。」
「見とったら分かるわ。」
「他の先生にはバレてないはずですもん。」
「あぁ、他の先生にはわからへんやろなぁ。」
「・・・。」
「まだ、分からんのか?」
「全然。」
「・・・俺ものこと特別視しとるっちゅーことや。」
「・・・・は!?」
「ほんまは言わんつもりやったけど。・・・は俺のことめっちゃ好きらしいからなぁ。」








そう言ってやらしく笑った先生には別の意味でむかついたけど、一瞬見せた表情は本気だった。あぁ、先生は同情やからかいでこんなこと言ってるわけじゃないんだ。・・・そう思えたら先生の煙草くさい匂いもちょっと趣味を疑う帽子も今まで思ってたよりももっと好きになった。





「オサム先生、大好きです。」
「!?・・・知っとる。」







乙女の祈り

王子の決意
(俺ものこと好きや。)



素敵な企画に参加させていただきありがとうございました!
また機会があればそのときもよろしくお願いします^^^


アミ


(20090322)