同じクラスで同じ委員会で隣の席の財前君はいつものように机に突っ伏して睡眠学習中だ。彼の耳元で光るピアスが視界の隅にちらつく。そのピアスが目に止まる度、私は思う。素敵なピアス、と。どうも私の中では財前君=ピアスという方程式が成り立っているようで、財前君を見ようとすると必ず財前君の耳元に目がいってしまって、よくよく考えると財前君の顔を知らないような気がする。なんとも失礼な話だが。それはともかくだ。私は財前君以上にピアスの似合う人はいないと思っている。財前君の顔もよく覚えていないのに「似合う」だなんておかしな話だけど。なんて言うんだろう。「似合う」ではなくて・・・そうだ、ピアスを美しく見せるのが得意なんだ。もしも今視界の端でぴくりと動いた綺麗なピアスが100円均一の品でも、財前君の耳元にあるだけで5000円の品に見えてくるのだ。実際の値段は知らないけど。

「財前ー、起きろーー。」

くすくすと教室の至る所から笑い声が聞こえる。財前君は先生の言葉を無視して眠ったままだ。

「はぁ・・・、ほんましょーもないやっちゃなぁ。」

財前君が殴らないと起きないのはこの2年7組を担当している先生方の間では常識と化しているので、怒ることもなく溜息一つで事を済ます。でもピアスに反射する光がキラキラと不自然に動くあたり、実は財前君は起きてるんじゃないかと思う。

「じゃあ横にいって、。答えてもらうでー。」

はっと黒板を見れば先生と目が合った。私はしょうがないと思いつつノートに目をやる。

「先生ー。さんが可哀相でーす。」

答えようと口を開いたら前の席の女子生徒が挙手をした。

「可哀相って何がや?」
「だってさん、毎日当たってるんやで?財前がいつも寝てるせいでとばっちりや。」

その子がそういうと、うんうんと教室中が頷いた。とばっちり、と言えばそうなのかもしれない。でも私は今までそんな意識したことなかったからちょっと驚いた。そして気になったのは隣の席の財前君。ピアスの反射光が一点に集中していた。

「せや、可哀相やでー。」
「なら、・・・寝てる財前を恨め。というわけでさっさと答えろー。」

クラスの反論空しく、結局私が答えることになった。






休み時間。財前君は未だに机に突っ伏している。次の時間の準備はしなくていいのだろうか。ちょっと心配になったが、また寝て過ごすのだろうと思うと杞憂で終わる。それにしても綺麗なピアス。

私が財前君のピアスに目を奪われていたら、ピアスがいきなり視界の外に出て行った。代わりに映ったのは、むくりと上半身を起こした財前君だった。私はさっと目を逸らす。ふわあぁ、と大きな欠伸が隣から聞こえた。それから会話も。

「財前、お前何時間寝れば気ぃ済むねん。」
「何時間でも寝てられるでー?」
「お前のその寝太郎のせいでさん、超迷惑してんねんで?謝りぃ?」
「迷惑なんかしてへんやろ。」
「それがしてるんやって。なぁ?さん。」

びくりと体が跳ねた。急に話を振られたことも要因だし、答え方に困ったのも要因だ。

「えっと、私は・・・、」
「なんや、何にもないやん。」
「今言おうとしてたやろ?」
「ふーーん。で、困っとるの?」

じっと睨まれた。私は初めて財前君と目を合わしたのかもしれない。顔をちゃんと見たのも初めてだ。結構綺麗な顔してる。瞳も綺麗。どうりでピアスがあんなに綺麗に見えるわけだ。私は一人納得していた。

「・・・困ってないって。」

すっと目を逸らされ財前君の視線は話し相手の男子生徒のものになった。もうちょっと見ていたかったかもしれない。

さんが人が良くて助かったなぁ、財前?」
「ほんまに。」
「・・・阿呆か。」
「でも何にも文句言われへんもん。」

そこでチャイムが鳴った。次の時間だ。






さん、さん。」

隣から息のみの音が聞こえた。ちらりと隣を見ると財前君が私を見ていた。寝ていないなんて珍しい。

「俺な、さっきの時間ほんまは起きてたんや。なんか、とばっちり悪かったなぁ。」

私が何も言わないうちに財前君は突っ伏してしまった。別に悪いことされてる気分ではなかったから謝らなくても良かったのに。私はキラキラ光るピアスを一目見て黒板に向き直った。そして皆曰く「とばっちり」で私はまた当てられた。






「・・・さん、もしかして今の時間当たった?」
「まぁ、一応・・・。」

またしても休み時間、財前君と目を合わした。たった半日で財前君の目をこんなに見れるなんてすごい日だ。

「あーーー、なんや。ほんま悪い。」
「別に、困ってないから・・・。」
「ならええけど。・・・なぁ、なんか俺に言いたいことあったらいつでも言ってな?俺、悪者みたいにはなりたくないねん。」

言いたいこと、かぁ。ちょっと思考したら、私の視界の隅で何かが光った。ああ、そうだ。

「なら、1つだけ良い?」
「ん?ええで?」

「そのピアス、どこで買ったの?」

別に知ったから買いに行くわけでもないけれど、聞きたくなった。こんなにも綺麗なピアス、財前君はどこで見つけたのかなって気になっただけ。

「何?興味あるん?」
「うん、ちょっと。」
「ふーーん。なら、これあげるわ。」

え。

「あの、財前君、」
「そろそろ新しいの買おうと思ってた時期やし、飽きたから処分に困ってたんや。丁度良いからあげるで。」
「えっと、そうじゃなくて、」

私はピアスが欲しいわけじゃない。そう言おうとしたら、チャイムが鳴った。

「ほな、俺また寝るからとっばきり食うかもしれへんけど今日のところはこのピアスで勘弁したって。」

私の机の上にころんと寂しくピアスが転がった。不思議なことに、全然綺麗に見えなかった。このピアスは財前君の耳元だからこそ輝けたんだなって実感した。だから、このピアスは財前君に返さないと。そう思ってちらりと隣を盗み見ると、輝きの減った耳元と、優しい目元が目に入った。起きてるなんて珍しい。最後にもう一度、財前君の耳元を見て前を向いた。やっぱり財前君ほどピアスの似合う人はいない。私の手の中で、ピアスは鈍く輝いた。





待ち遠しい、
終りのチャイム

(これ、返すね。)(もう俺の物やないから。)(え?)(今はさんのピアスや。)








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四天宝寺に恋をした様へ。
企画提出物です。
財前君が同級生にどう接するのかわからなくて偽者になってしまいました;
また機会がありましたら今度はちゃんと書けるように精進したいと思います。
参加させていただきありがとうございました。

四天宝寺に恋をした